インディーズソフビとは?魅力・買い方を原型師&現役作家が解説
ヨシダケンジ キャラクターデザイナー / 原型師
オリジナルキャラクター『ハムラ』と『ハムオ』でアートトイデビュー。ワンダーフェスティバル表紙にも起用され、原型師として「宇宙兄弟(講談社)」や「少年アシベ(双葉社)」など数々のソフビ/アートトイも担当。
更新日:2026.09.08
こんにちは。キャラクターデザイナー / 原型師のヨシダケンジ(吉田健児)です。
「インディーズソフビ」というワードで、ここに辿り着いた方が多いと思います。
聞いたことのないキャラクターなのに、なんだか気になる。ショップとかでいつでも買えるわけでもない。調べてみると、どうやら個人が作っているらしい。
さて、これはなんなのか。
- 個人作家や小規模なブランドが主体になって、企画・展開しているソフビのこと※厳密な線引きはありません。以降は分かりやすさのため「個人」と書きます。
- 作家ごとの個性的なキャラクター・造形・カラー展開が楽しめる作品が多い
- 原型制作や製造そのものは、専門家に任せている場合が多いです。自分の手で全工程をやることが条件ではありません
うちの作品も、そういうソフビのひとつです。『アートトイ』『デザイナーズトイ』とも呼ばれる存在。
左が、大きくなりすぎてモンスター化しかけているハムスター『ハムラ』、右がちょっぴりハムスター化している少年『ハムオ』。
このふたりを生み出して作家として展開しつつ、原型師として『宇宙兄弟(講談社)』や『少年アシベ(双葉社)』など著名なキャラクター原型から、インディーズソフビ原型まで担当しています。ここまでバリバリに原型師やってるソフビ作家はちょっとレアな感じ。
この記事では、作る側の話も交えながら、インディーズソフビの何が面白いのか、値段はどれくらいか、どこで出会えるのかを書いていきましょう。
そして後半では、なぜ企業でもない個人が、こんなものを商品にできてしまうのかについて少し書いてみましょうか。自分のオリジナルキャラクターがいる方には、たぶんそこが一番面白いところです。
インディーズソフビの、何が面白いのか
面白さは、大きく2つあると思っています。
知らないキャラクターなのに、欲しくなる
映画で活躍したわけでも、子供の頃から知っていたわけでもない。それなのに、形を見ただけで欲しくなる。
インディーズソフビの入り口は、案外そんなものです。
作風はかなり幅があります。大まかにはこのあたりです。
- 怪獣・特撮系 ── 昭和の怪獣ソフビの空気を、今の造形でやる。この世界のもともとの中心
- キャラクター系 ── 作家のオリジナルキャラを立体にする。かわいい方向も多い
- アート・カルチャー系 ── 人形というより立体作品。海外のアートトイに近い感覚
ぶっちゃけ「なんじゃこりゃ!?」ってものが多いとも言える。
それは一概に悪いこととは言えず、それすらも魅力であるとも言えます。
数年前のコロナの時期、私が最初にソフビに出会ったのもそんなキッカケでした。
これが私自身がソフビに魅力を感じ始めたキッカケです。
同じ形なのに、色が変わると別物になる
そして、どの方向性にも共通してあるのが「カラー展開」です。
同じ型から抜いた同じ形を、彩色を変えて出していく。この展開のやり方は、ソフビ特有の文化だと思います。
さて、私の作品『ハムラ』を見てみましょう。
まだ2026年にデビューしたところなのでバリエーションが少ないのですが、左が通常版。右はデビュー記念限定版として発表しました。
のちに、ソフビ専門店One up.の周年イベントでも採用されたのでOne upロゴを加えたりして展開しましたね。
作る側は、同じキャラで何度も新しい顔を見せられる。
これがやりたくてソフビを作る人も多いですね。要は立体的なキャンバスといえます。
私は造形師/原型師もやってるので、キャラクターデザインも造形/原型制作も自分で全てやってるわけですが、イラストレーターさん含め多くの人はキャラクターデザインだけをして私のような原型師に造形を投げます。立体を作るのはちょっと特殊な技能って感じですからね。
そして、仕上がった商品をキャンバスとして好きなように色を乗せていくわけです。
そうやって、さまざまなカラーリングが施されたソフビが生まれる。インディーズソフビの魅力ですね。
それゆえにコレクションとしてカラー展開を集める人が多いのです。
ハムラとハムオのこと
私も「自分で作品を作りたい!」との衝動に駆られたわけです。
さて、どんなキャラクターを生み出すか。
私は、深く深くハムスターを愛しております。相棒のハム(♂キンクマハムスター)を永遠に残したいとの想いを胸に、キャラクターデザイン/造形に没頭したわけです。
そのまんまハムスターのままじゃオリジナルキャラクターとは言えない。
ウチのハムはちと大きくなり過ぎてるので、“大きくなりすぎたハムスター”というコンセプトに。
ハムスター×かいじゅう(モンスター)
そうして『ハムラ』が生まれました。造形時間は100時間くらいかな。もっとかな。
そうして出来上がったふたりが、ソフビ専門店 One up. の店頭に並んでいます。
- ハムラ ── 背中に虹色の背びれを持つ、ちょっと特別なハムスター
- ハムオ ── ハムラに寄り添う、ちょっと特別な男の子
現在、絵本計画が進行中です。ふたりとも、まわりとどこか違う。
でも一緒にいることで、その「ちがい」がこまったことではなくなる。そういう話です。
「きみと一緒なら、『ちがい』は『たからもの』になる。」
ふたりの話はトップページのキャラクター紹介にあります。
値段はどれくらいか、なぜその値段なのか
うちの『ハムラ』『ハムオ』は各12,000円です。作家やサイズによって幅がありますが、数千円から一万円台になることが多いと思います。
はじめて見ると「おもちゃに1万円以上?」と思うかもしれません。安くはありませんよね。ただ、理由ははっきりしています。
- 最初の設備費を、少ない体数で割っている ── 原型・ワックス転換・そして金型。ここまでの費用を、数千体ではなく数十体で割ることになります
- 1体ずつ人の手で塗っている ── 彩色は自動になりません。塗り分けが増えれば、その分だけ手間が乗ります
- 作った分だけ成型費がかかる ── 成型費は1体ごとに発生します
つまり安さで勝負する商品ではないということです。
商品になるまでの大きな設備投資を個人が負担し、そのかわり何にも縛られず自由な創作ができる。
それと、もうひとつ。中古では定価より高くなることがあります。
金型が残っていても、その成型色・その彩色の回は二度と出ないことがあるからです。同じキャラでも「あのときの色」は戻ってこない。そこに希少価値としての値段がつきます。
ただ、手間がかかっているから、必ずその値段の価値があるという話でもありません。
買う側にとって大事なのは、その形と色を気に入るかどうか、そばに置いておきたいかどうかだと思います。作り手の事情は、値段の背景として知ってもらえれば十分です。
どこで出会えるのか
ショップに並ぶこともありますが、ショップ側としてはやはり売れる商品じゃないと並べられない事情があります。
ここらへんはショップの目利きですね。
- イベントワンダーフェスティバル、デザインフェスタなど。作家から直接買えます。実物を手に取って選べるのが一番大きい。
- 作家の通販各作家が自分のショップで販売します。数が少ないので、告知から短時間で完売することもあります。
- 取扱店インディーズソフビを扱っている専門店。複数の作家の作品をまとめて見られます。
通販で探すときは、まず作家名やブランド名で公式サイト・SNSを見てみてください。
いつでも注文できる作品もあれば、販売日時を決めている作品、抽選や受注の形式を取る作品もあります。買い方は作品ごとに違うので、それぞれの販売案内で確認するのが確実です。
かくいう私の『ハムラ』と『ハムオ』も、通販ではほとんどSOLD OUT状態です。
One up.さんやT-BASEさんの店頭には比較的在庫の確保を心がけているので、ぜひ見かけた際はお迎えください。
ヤマシロヤさんへの納品も準備中です。
売り切れていたら、もう買えないのか
そうとは限りません。
売り切れやすいのは、ひとつの回で作る数がそもそも少ないからです。注文が集中すれば当然すぐなくなります。
彩色できる数や、在庫を抱えられる量にも限りがあるわけです。
だから、あきらめなくていい
- ソフビの金型は、きちんと保管・手入れされていれば長く使えます
- だから「売り切れ=二度と手に入らない」とは限りません。条件が合えば、再販やカラー展開として出てくることがあります
- 気になる作家がいるなら、販売予定はSNSの告知を見るのが早いです
私も、次にいつ何色を出すかはSNSでしか告知していません。
制作中の様子や、次の色を試している段階もそのまま流しています。
なぜ個人でも、自分の作品を出せるのか
さて、ここからは作る側の話です。作家の視点に立ってみるとちょっと面白いかもしれませんよ。
「いつかは自分もソフビを作りたい」って人もいるかもしれません。
そもそも、これは冷静に考えると変な話です。フィギュアは金型が要る工業製品です。それなのに、企業ではない個人が、自分のキャラクターを商品にしている。
大企業が大量生産で作っているソフビと、個人作家が中心のインディーズソフビは何がちがうのでしょうか?
何かを量産しようと思ったら金型が要ります。そして金型といえば、鉄の塊を機械で削り出す世界です。個人が手を出せる金額ではありません。
ところがソフビの金型は、削って作りません。
ソフビの金型は「電鋳(でんちゅう)」で作る
- 原型と同じ形のワックス(蝋)のクローンを作る
- それを液体の槽に沈めて、電気で銅を表面に積もらせる
- 厚みが出たら加熱して、中のワックスを溶かして流し出す
- 残った銅の殻が、そのまま金型になる
削り出すのではなく、積もらせて作る。
この作り方のおかげで、金型にかかる費用を削り出しよりかなり抑えられます。
さっき「値段が下がりにくい」と書きましたが、それでも個人が計画できる範囲に収まるのは、この作り方があるからです。
これが実際の電鋳金型です。うちの『ハムラ』と『ハムオ』のもの。銅の殻をフレームで支えてあります。
手前の板に小さいパーツが並んでいるのが分かると思います。これが「フライパン1枚」と呼ばれる単位で、ここに何が載るかで金型代が決まります。
こういうものが工場に置いてあって、ここから1体ずつ抜かれてきます。
そして、この金型はきちんと保管・手入れされていれば長く使えます。だから同じキャラクターを、時間をおいて色違いで出し続けられる。
さっき見てもらった通常版と限定版も、同じ金型から生まれたものです。
では、他の素材ではどうなのか。作り方が違えば、向いている作り方も変わります。
どれが優れているという話ではありません。向き不向きです。
そのうえで、少量ずつ追加しながら、同じキャラクターを色違いで長く展開したい。そういう作り方と相性がいいのがソフビです。大量生産したくなったらそれも可能。
インディーズソフビにカラー展開の文化が根付いているのは、これが理由だと思っています。
工程をもっと詳しく
- 金型の話はソフビの金型とは?電鋳と「フライパン1枚」の仕組みに書いています
自分のキャラクターも、ソフビにできるのか
ここまで読んで「自分のキャラでもできるんじゃないか」と思った方へ。
できます。そして、造形が自分でできる必要はありません。
記事の最初に書いた通り、インディーズソフビの条件は「全部を自分の手でやること」ではありません。企画とキャラクターの主体が自分であればいい。原型や製造は、専門家に任せることがほとんどです。
私はその原型を作る側の人間です。
ただ立体にすれば、ソフビになるわけではない
原型師の仕事は、キャラクターの良さを保ったまま、工場で成型できる形に整えることです。
ソフビには成型上の制約があって、そのまま立体にすると抜けない形、割れる形がどうしても出てきます。そこを、見た目を殺さずに解いていきます。
極めて特殊な知識が必要と言えるでしょう。くだいて言えば「ソフビはマジでめんどくさい」のです。制約を全て把握していないと商品化できません。
少し上で示した図の通り、ソフビは量産において非常に優秀です。だから選ばれているわけですが、その代わり『数々の制約をクリアしていないと量産ができない』という弱点が大きいのです。
たとえば、こういう判断をしています。
- メガネ ── メガネに限らず、ソフビは空間を表現できません。『宇宙兄弟』のキャラクターでは、メガネの隙間をわざと埋める形で造形して成立させました
- 抱きかかえた姿 ── 『少年アシベ』でアシベがゴマちゃんを抱えた造形は、本来なら分割が増えるところ。ゴマちゃんの体を少しだけ外に開く形にして、分割を増やさずに成立させています
- 細い手足 ── そのままでは成型で抜けない形状も、太さと角度の調整で通せることがあります
無駄な分割は増やさないのが鉄則です。分割が増えるほど、見た目にも、費用にも効いてくるからです。しかし、形状の制約をクリアする以外にも、彩色を見越した分割も同時に考えることが原型師の仕事です。
「この形は無理です」で終わらせずに、どこまで元の姿を残せるかを考えて日々取り組んでいますね。
担当した作品をもっと見る
- ここに書いたのは一部です。作例と原型制作の流れはソフビフィギュアの作り方|原型制作の依頼は相談してねにまとめています
メーカー案件と個人の方からのご依頼を合わせて、年間30体ほど。抱えられる限界がそれくらいですね。
作家の目線からも考えて、原型の先に彩色があることを前提に進めています。
ご相談は、今あるイメージから
- キャラクターの絵や参考画像 ── 三面図(正面・横・背面)があると一番早いです※イメージ画像だけでも大丈夫です。
- だいたいの大きさと、作りたい時期 ── 決まっていなければ未定のままで構いません
- 作りたい数や予算 ── 決まっている場合のみ。決まっていなければこちらから確認します
私がお受けするのはデジタル造形から原型制作まで。ここは自分の工房で完結させています。
その先のワックス転換・金型・成型は、工場選びから量産が始まるまで通してご案内します。各工程のプロがバラバラなのがこの世界なので、原型の段階でその先を見据えておくことが重要な仕事です。
Order
自分のキャラクターをソフビにしたい方へ
原型制作を担当します。必要に応じてワックス転換・金型・彩色マスクの発注も支援します。成型工場はご案内します。
まず流れを知りたい方は本編へ。作りたいデザインがある方は、画像と希望サイズを添えてご相談ください。
よくある質問
好きな1体が見つかると、見え方が変わる
インディーズソフビは、個人や小規模なブランドが主体になって企画・展開しているソフビです。
作家ごとの造形と、同じ型を色で変えていく展開。この2つが面白さの中心だと思っています。
数が少ないので、気になる作家がいたら告知は追いかけておいたほうがいい。金型は残るので、売り切れても次があることは珍しくありません。
そして、作る側に回るのも思っているより現実的です。造形が自分でできなくても、自分のキャラクターを商品にすることはできます。
それができる素材は、そう多くありません。だからこの世界は面白いんだと思います。
私も、買うところから始まって、作る方に回りました。まさか他の方のキャラクターの原型まで作ることになるとは、最初は思っていませんでした。
この記事でハムラとハムオが気になった方は、SNSでふたりの続きを。自分のキャラクターを形にしたくなった方は、原型制作の実例とご依頼の案内を見てみてください。
まずは、好きな1体が見つかれば。それだけでも、この世界を知った甲斐があると思います。
作る側に回りたくなったら
この記事で書いたのは、あくまで全体の話です。実際に作るとなると、造形 / 原型制作・ワックス転換・金型・成型と工程が続きます。
最大の難関である原型制作はこちらで担当し、量産まで通る形に設計します。必要であればワックス転換・金型・彩色マスクの発注まで進められます。
相談前に、これがあると話が早いです
- 三面図(正面・横・背面。ラフでもOK)
- 作りたいもののイメージや方向性
※営業メールが多く埋もれる事があるので、SNSのDMが確実です(フォローしてからどうぞ。フォロー外のDMは通知が来ません)。いつも詰まっているので2〜3ヶ月待ち、スケジュール的にお断りする事もありますがご了承ください。
ヨシダケンジのプロフィール
ヨシダケンジ
吉田健児
キャラクターデザイナー / 原型師
オリジナルキャラクター『ハムラ』と『ハムオ』でアートトイデビュー。ワンダーフェスティバル表紙にも起用。自身の作品だけでなく、原型師として「宇宙兄弟」や「少年アシベ」などの原型も担当。年間30体ほどの造形/原型制作を手がけています。