ソフビフィギュアの作り方(原型製作の依頼は相談してね)

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ソフビフィギュアの作り方(原型製作の依頼は相談してね)


こんにちは吉田健児(ヨシダケンジ)です。ハムラ堂やってます。2022年5月”かいじゅうハムラ”でソフビデビュー。

ソフビはなかなかクセ者で、だからこそ工夫が面白いと言えるかな。いや、、どうかなw
好き放題にデザインしたものをソフビ化出来るか?と言えば、だいたい形状的に無理だったりするでしょう。

「あー、この部分が無理だね。成型の際にゾルが引っ掛かっちゃう。」
「ここの部分の角度がこれだと成型できないね。ゾルが行き届かない。」とか。

ソフビ化可能なカタチ(成型出来るカタチ)には、なかなか厄介な制約があります。
それらを解決してソフビが仕上がっても、綺麗に彩色するには彩色マスク(どんなモノかはググってね)を特注で作ってもらうわけなので、その事も考えて造形してないと彩色マスクの工場から「ちょっとこの部分は無理だね。」ってマジでなります。
各工程のプロがバラバラなので原型の段階で見据えてないと結構厄介。

吉田健児
吉田健児

ちょくちょく造形の相談が来るようになったので、今後たまに引き受けたいと思います。

ここでは、原型製作を依頼された際『どのような工程で原型が仕上がるか』の説明を書いていきます。
依頼された際にここをサラッと見てもらう用でもあります。
ちなみに前提として、自分の工房を持ってますので私が実際に原型を造ってるこの流れは効率化されています。トリッキーなことや無駄なこともしてないオーソドックスなスタイルです。

①デジタル造形
ヨシダケンジ(ハムラ堂)はApple Mac×Wacom×Zbrushによるデジタル造形にて原型製作しています。
デジタル粘土を使ってモデルを彫刻するツールとして有名なZbrushというソフトウェアでの造形になります。粘土での造形に近い感覚で直感的にデジタルスカルプトを行える決定版ですね。引っ張ったり、彫ったり、伸ばしたり、粘土で作るアナログ造形と工程がほとんど同じです。ほとんど、っちゅうかそのまんま。
映画シン・ゴジラのゴジラもZbrushでしたね。第一線のプロ御用達です。

↑これは”ハムおとこ”を仕上げた様子。
この”ハムおとこ”もそうですが、私は造形しながら考えて、キャラクターを作っていくスタイルです。
飼ってるハムスター(ハム♂)が巨大化し”かいじゅうハムラ”になってしまった。それに引っ張られるカタチで巨大化してしまった飼い主ですね。かわいそうに。

もっと粘土っぽい造形というか、グチャッとしたラフな造形も当然出来ます。やってる事は粘土をこねて作るアナログ造形と一緒ですから。それに加え、データですので大きさをいつでも自由に変更可能だったり、製品化後もいじれたり『あらゆる面においてデジタル造形の方が優れている』と確信しています。
イラストを描く人がいまやデジタルで描くのが主流なように。

例えば、もうほとんど全体の完成形に近づいた時に「んー、、最初に提示したイメージよりもうちょっと顔は大きかった方がよかったかな。。てへっ。」と考えが変わったとしても対応は可能です。
アナログだとちょっと無理ですよね。もう一度顔部分を粘土で盛って大きくして、再度顔を掘り込んでいく事になる。それはつまり作り直しである。

吉田健児
吉田健児

造形の依頼の際は「正面、横、背中側、場合により斜め」から見た際のイラストを提示してもらいます。その通りコチラが造れるくらいには正確に。
造形依頼での私の役割は、私の感性で勝手に造形することでは無く『依頼者がイメージしているものを立体造形してあげる事』だからです。イメージを正確に伝えてもらう必要がある。
そもそも平面のイラストは解釈やニュワンスをコチラで加えていかないと立体にはならないのですが、平面の状態でなるべくニュワンスも伝えてもらいます。
造形に必要なのが『感性』と『技術』ならば、主に技術を売るって事ですね。私の感性を入れすぎたら、それはもう私の作品でしかなくなってしまう。私の感性で提案とかはしますが。
制作途中で何度も希望を聞き調整していきます。
造形依頼において感性:技術が1:9または2:8くらいの比率ってイメージで、1〜2割くらいの感性やアイデアは加わる感じです。それが造形師としての個性でもあり、クセやスタイルは出ますしね。


とある工場のベテラン職人さんが「分かんないけど最近はパソコンでパパッと作れるんでしょう?」って話してましたが、それに関しては全く違います。ラクそうなイメージ持つのは分かりますけどもねw
実際は、ほぼ同じことを机の上で粘土こねてやるか、デジタルな粘土をこねてやるかの違いくらいでしかありません。粘土こねるよりはスピードが速いですけどね。やれる事も多い。
私が造形を始める前、海洋堂のベテラン原型師さんが「これから先の時代、デジタルで造形出来るようにならないといけない。。。!」って事で長い時間をかけデジタルへの移行に奮闘されてるって記事も読みました。

音楽業界でのDAW(Digital Audio Workstation)みたいなものです。今やDAW使ってないスタジオなんてありません。
自分自身ミュージシャンとして「アナログレコーディングの方が味わい(暖かみ)がある」と思いたかった時期もありますが。しかし、その『味わい』すらもデジタルで再現出来てしまう。
『味わい(暖かみ)』とは例えば『ノイズ』です。音声信号がアナログ回路をいくつも通る事でどうしてもノイズが乗ってくる。本来、ノイズはサウンドにとって敵なのですが、排除しきれない僅かなノイズ達が実は、味わい、暖かみを与えてるわけです。各サウンドを繋ぐ(埋める)潤滑油のような役割。
DAWでノイズを付加してやれば同じことが出来る。各プラグインの進化も極まり、DAWはデジタル臭さを克服しもう完全に主流となりました。それと同じように造形においても、デジタル臭さを克服した画期的なソフトウェアがZbrushであると言えるでしょう。当然DAW同様、デジタルっぽくも出来る。

ハム
ハム

…時代は先へ先へと進むのだね。

吉田健児
吉田健児

“抗いようが無い流れ”と言えるだろうね。その代わり、デジタルだと膨大な時間と努力を費やして技術(やノウハウ)を学ばないとマトモに造形出来ないよ。

さて、ソフビが出来上がる工程として、

原型製作(デジタル造形→3Dプリンターによる出力→サポート除去→表面処理)
・ワックス転換 #専門領域
・金型製作 #専門領域
・成型 #専門領域

この過程を辿ります。

ヨシダケンジ(ハムラ堂)がやるのは原型製作(デジタル造形→3Dプリンターによる出力→サポート除去→表面処理)までです。というか、まあ全部出来るということです。その後は、私が原型作ろうが、ご自身で作ろうが各工場に任せるしかありません。
ワックス転換まで無理矢理自分でやってる方もいるっちゃいるんですが、明らかにクオリティ下がりますし専門のプロに任せるべきです。各工場へ紹介可能です。
なかなかソフビ製作において、どこに頼めばいいか分かんないですしね。工程それぞれで工場バラバラですから。
自分も分からずめっちゃ費用かかりました。今だといくつも知ってるのでやり直したい気分です。(イラッ
ルートで全然価格変わりますしね。。

さて、デジタル造形にあたり、冒頭に書いた
「あー、この部分が無理だね。成型の際にゾルが引っ掛かっちゃう。」
などの問題は相談して解決するほかありません。相談というかアドバイスに近いですね。
ソフビの性質上物理的に成型出来ないカタチは誰がどうやったって無理なので。
デザイン画(正面、横、背面のイラスト等)をもらって造形するわけですが、
分割箇所をどこにしようか?とかも含めどうやったらソフビとして作れるか、ってとこも相談して造形ですね。念の為、繋がってる成型工場にも確認しながら進めます。
いかんせんホントにソフビは制約が多く各工程の工場がバラバラなので、途中でアラッとつまずく事は起き得ます。
なので各工場に確認取りながら制作する必要があるわけで、なるべく考え尽くして制作しましょう。

原型から製品化までの収縮率も、だいたい5-6%とされていますが工場によっては2-3%のところもあります。
ソフビの性質上どうしても「出たとこ勝負」なんですよね。工場の人も同じこと言ってました。
私も上記の新作”ハムおとこ”の原型を工場に提出したところですが「どれくらい収縮するかは分からない」と言われています。おおよそ5-6%のはずなので、それを見越したサイズにしていますが。
良くも悪くもソフビって、昔ながらの伝統工芸ですから不安定なトコロがあります。

吉田健児
吉田健児

昔ながらの作り方ですからね。それ以外に作る方法が無いから。各工場行ったけどホント面白いよ。

ちなみに、分割箇所を作らない1パーツでのソフビはいわゆる”指人形”です。
ソフビの成型は必ず大きく穴を開けるので、その穴を塞ぐようにパーツをくっつける事で一般的なソフビになるわけですね。そして、その付加価値としてその部分が動きますしね。

造形物の出力
さて、やっと最重要の造形が終わりました。
次は造形物を実際に出力します。3Dプリンターの出番です。
使用しているのは2023年時点で最新のモノで、解像度8Kを誇る光造形です。
今後買い換える必要も無いくらいオーバースペックだろうなってくらい最強クオリティーです。4Kどころじゃない8Kですからね。
技術革新によってこれほどの武器を、僕らのような個人作家でも手にいれられるようになりました。ゆーても高いですが。

実際に出力する際に、サポートと呼ばれる柱をくっつけます。柱で支えながらカタチづくっていくわけですね。
この柱の配置も厄介で経験則が必要、その上でトライアンドエラーの連続です。光造形と呼ばれる最新の方式は、めちゃくちゃ細部まで綺麗に出力できる代わりに難易度が高いです。

吉田健児
吉田健児

僕自身もこの”ハムおとこ”を綺麗に出力するために相当な時間を費やしました。何度も失敗しながら。


数えきれないほど出力してるし、もう慣れきってるんですが。それでもカタチが特殊だったので相当難しく、苦労しました。
原型として使用するから通常の出力よりもっともっと綺麗に出力しないといけないわけで、1回の出力で20時間くらいかかり、それを何度も何度もトライアンドエラーで材料のレジンだけでも3ℓ(15000円相当)くらい使ったんじゃないかな。(マジで疲れた)

そんな感じで、出力するのもなかなか大変でそこそこ費用もかかりますよってことです。
業者に頼んだら高額で、さらに、原型として使用できるほどのクオリティーは対応してないはず。
(最新機種でも積層ピッチ0.05が標準のところ、それだと原型としては粗いので0.01-0.02で出力します。倍以上の所用時間、綺麗さって事ですね)。美しい原型として使用できるくらいのクオリティーでの出力を、やってくれるとこ無いんじゃないかな分かんないけど。

③表面処理
やっと出力成功!(涙)
の次は、サポートを除去し表面処理をしないといけません。

見てわかりますが、柱がいっぱいついてるでしょ?
これを綺麗に排除していかないといけません。原型として工場に提出するんだから。

造形物にいくつもの柱が埋まりまくってるわけなので、ニッパーで切っただけじゃその跡は全く消えません。『サポート痕』と呼ばれます。これを1箇所ずつヤスリなどを駆使して地道に綺麗にしていくわけです。
あと『積層痕』の処理も。(自分の場合は上で書いた通りデフォルトの倍以上のクオリティーで出力してるので、ちょっとは処理しないといけないけどあんま必要ない)
コツと道具と時間が必要ですが、まあ根性で綺麗に仕上げるしかありません。
このまんまシリコンで型を取り、このまんまの製品になるわけなのでね。
表面処理は、乾燥→二次硬化も含めて丸2-3日くらいで仕上がるかな。
エアブラシでサーフェイサー吹きながら、時にはパテで埋めながら、何度も何度も繰り返して処理していきます。

そして、、、

やーっ!!!!

まあこれ完成直前なので分割付近がハゲてるように見えますが、この後最後のサーフェイサーを吹いてつるっつるのムッチムチに仕上がりました。サポート痕無いでしょ?かわいいね。
ちなみに原型やサーフェイサーでこのようなグレー(テラコッタ)が多いのは、”グレーが最も凹凸や傷を目立たせるから”です。
このようなグレーの状態ですら傷やサポート痕が見えないのなら、メチャクチャ綺麗に仕上がってるということですね。

ようやく終了。この後、ワックス転換をしてもらう為にこの原型を工場に送りました。




以上が、ヨシダケンジ(ハムラ堂)として出来ることです。原型製作に至るまで一括して出来るってとこですね。
労力や時間はモノによるので、費用とかはご相談ください。
現状、100000-150000円くらいでデジタル造形から原型制作を一括で引き受けて制作しています。
自分で作ってるのがメインなので、報酬高くなくていいってスタンスです。っつっても相当な時間と労力かかるし大変なので、そこそこは。

吉田健児
吉田健児

あくまで自分の作品メインなので、スタイルがある程度合うものなら造形を引き受けさせてもらいます。

以下からご相談ください。
https://hamllado.online/toiawasedesu/

なんか営業のメールがめっちゃ多くて埋もれる可能性あるので、TwitterInstagramの方が確実かもしれません。
フォローしてからDMしてくださいね。フォロー外からのDMは通知来ないので。

最後に、
他の各工程のおおよその目安ですが
(私の仕事ではないのでおおよその目安です。各工場に見積もりだしてもらわないと分かりません。)
・ワックス転換 150000-300000円? ※パーツ数によりますね
・金型製作 100000円?
・成型 1回あたり1000-2000円?


ソフビ作ろうと思ったらかなり費用かかりますよね。もうちょいなんとかなれば私もバンバン作るんですけども…w